第118章 月夜の湯煙
「抱き締めて良い?」
振り返れ無いでいる私に何処か悩まし気な声色で問う
いつも勝手に抱き締める癖に。この状況で私が良いと答えたなら其れ以上も許してしまえる状況で私に選択を迫る彼
…………本当にずるい人だ
だけどきっと一線は越えない………彼も私も私達の関係を誰よりも理解しているから
それでも私は彼となら……なんて、胸がぎゅっと切なく成った
「……はい」
小さな声を紡いだ途端に背後からしっかりと抱き締められて胡座をかいた彼の脚の上に引き寄せられる
水分を含み身体に張り付いたタオルは意味を成しているのか解らなくなる程彼の腕の感覚をはっきりと伝え鼓動が耳に煩い程騒いだ
突然背中に柔らかな感覚が触れてゾクリと粟立つ
其れが彼の唇であると理解すると心音はまた早く成った
作り物の様に端正な顔立ちの彼
其の唇が素肌に触れていると考えただけで頭がぼんやりした
柔らかく触れる唇は背中からうなじにかけてを往復し擽ったくて身を捩ると
「擽ったいんでしょ。」
"其の意味が解るよね"とでも続きそうな台詞が悪戯な声色で届いて顔が熱くなり押し黙る
すると、私の身体は彼の力によって簡単に向かい合う様に座らされてしまった