第118章 月夜の湯煙
彼の視線の先には脱衣室の端にある丸いテーブル
「………何ですか?」
「お酒。」
「お酒?」
彼の美しい裸体を視界に入れぬ様に意識をテーブルのみに向けて近寄れば其処に用意されていたのは氷の入った桶に飲料水と並んで徳利が入っていた
側に貼られた説明書きによると中身は日本酒らしく湯に浸かりながら楽しめるという粋なサービスだった
「凄いです!これは飲まずにはいられませんね!!!!!憧れのやつですよ!!!!」
「ふーん。」
俄然テンションが上がった私に単調な相槌を打った彼は徳利とお猪口のセットをお盆に乗せると
「じゃ、先に飲んで待ってるから早く来なよ」
と言って先に温泉へと消えた
「あ、はい」
小さく返事する頃には完全に扉が閉まり
ドキドキと高鳴る胸
私は温泉に浸かる前から早くも逆上せた様に軽い目眩を起こしていた
「………失礼しまーす」
おずおずと足を踏み入れた貸し切り風呂は思いの外広かった
半分から向こうには屋根が無く、半露天風呂と成っている様だ
湯気が立ち込めぼんやりする視界の中、彼は露天風呂に成っている方で静かにお猪口を傾けていた
緊張し過ぎて手と足が同じ動きに成りまるでロボットの様に成ってしまった私はかけ湯を済ませてがっつり肩迄浸かった状態で彼の傍迄近付いた
そうすれば濁った水質の温泉の為肌が見えない事に気が付いたのだ
いくらタオルがあったってやはり恥ずかしい