第118章 月夜の湯煙
振り返るも視線を床に落としたままの私はシャンプーを拾おうと屈んだのだが一足先に彼が拾い上げてしまった
シャンプーを見ていた事でつられて上がった視線の先
彼はいつの間にか随分近くにいて拾ったシャンプーを眺めていた
「これだったら確か同じのが部屋にもあったよ」
「………あ、あぁ。良かった……」
宣言通りしっかりとタオルを腰に巻いている彼
私の質問をしっかり聞いていて返答してくれる辺り彼は全く緊張なんてしていない様子だ
相反してまだ浴衣を身に着けているにも関わらず緊張に緊張を極めている私はただまんじりともせず棒立ちである
…………大体イルミさんは間違っているのだ
混浴の普通を知らないが普通こういう時に巻くタオルは一番大きい物を選ぶのでは無いだろうか
彼が巻いている物は明らかにバスタオルでは無くフェイスタオルより少し大きいくらいの物だった
タオルを巻いたからと言って何だと言うのだろう
彼の魅惑的な肌が惜し気も無く露出されているには変わり無くパンクしそうな程私の心臓は騒ぐのだ
(…………そりゃ………素っ裸よりは全然良いけど………罪過ぎる。罪過ぎるよイルミさん其の肉体美は犯罪。)
なんて混乱する私を他所にシャンプーを元の位置に戻した彼は普段と何ら変わり無い様子で
「俺はあっちの方が気になるんだけど」
と単調な声を寄越した