第118章 月夜の湯煙
彼は暫くフリーズした後に素早くスマホを確認し深い溜息を付いた
「本当だ。………プランに付いてたみたい。」
私を真っ直ぐ見詰める瞳に感情は無く私はポカンとしたままたじろいでしまう
私の頭の中をぐるぐる巡った思考は
彼と混浴!?恥ずかしい。あり得ない
だったのだが仲居さんの雰囲気は柔らかいながら「後が詰まるから早くして」と言った感じだった
何時までもこの肌寒い中仲居さんを廊下に待たせている訳にも行かないが中々決心の付かない私とは裏腹に恐らく下着を仕舞っているであろう袋を取り出した彼は納得している様なしていない様な微妙な表情を此方に向けていた
そして私は確信する
彼もきっと私と同じ気持ちなのだと。
恥ずかしい、とは思っていないかもしれないが混浴する気等更々無かったのだろう事。そして仲居さんの雰囲気を察してしまい困惑しながらも何故かこれ以上待たせられないと焦る気持ち………
彼は驚く程のマイペースの癖に気真面目な部分があり、今回は其の部分が騒いでいるのだろう
………まぁ、あくまでも私の推理に過ぎず真実は謎だが
私に至ってはNOと言えない日本人の典型だった
彼はまだ微妙な表情を浮かべながらもチラリと扉を振り返る仕草からやはり人を待たせているという事が気になっている様子が伺える