第118章 月夜の湯煙
秋を示す様に合唱する虫の音色が控え目に鳴る中で一際強い風が吹き其の肌寒さに身体がぶるりと震えた
と、突然彼が空間を詰める様に此方に腰をずらして座り直した
逞しい身体が私の身体にピッタリ密着してどちらとも解らない体温が薄い布越しに伝わりドキドキと高鳴る胸と緊張でフリーズする
何故突然触れ合う程の至近距離に来たのか理解出来ず混乱していると
チャプチャプと水面が揺れて彼の脚が私の脚に擦り寄る様に湯煙の中で絡められた
途端にビクリと跳ねた身体
温かな湯の中で素肌と素肌が触れ合い、密着しているのに尚も求められる様に脚を絡められ
腰に回された腕は私の手をしっかりと握った
長い指に絡め取られて指と指を絡ませれば途端に手と手が隙間無く交わり緩く抱き寄せられれば私の身体は簡単に彼の胸板に凭れ掛かかる
厚い彼の胸に身を任せ頬を擦り寄せると彼はぎゅっと大きな手に力を込めた
切ない程に高鳴る鼓動は彼も同じでドキドキと早い心音が耳に届き私は心地好さに瞼を閉じる
「……イルミさん」
「何。」
何時もより優しい声色が降ってきて絡まった脚がもどかしく水面を揺らした