第118章 月夜の湯煙
「足湯やぁ!」
すっかり冷えてしまった身体に嬉しい場所だった
私は嬉々として長椅子に腰掛けると浴衣の裾を捲り上げていそいそと足を浸す
硫黄の香りと檜の香りが混ざって立ち込め、視界は湯煙でぼんやりとしている
辺りを見渡せば柔らかい照明に照らされた竹林に囲まれた空間は閉鎖的でいて見上げれば何処までも突き抜けた綺麗な星空が伺える
足元の間接照明で影が浮かぶ砂利道も上質な雰囲気を作り上げていた
遅れて足を浸けた彼を盗み見る
はだけた浴衣からすらりと伸びる素肌の脚は直接的に照らされていない分くっきりと影を作り逞しさを際立たせていてドキリと心音を早めさせた
揺れる水面を眺める横顔は気が抜けた様に細められた瞳に長く上を向いた睫毛が影を落とし
すっきり高い鼻筋や緩く開いた唇が妙に色っぽい
「あったかいね。」
「!!はい、あったかいです……」
彼に見惚れていた為に少し跳ねてしまった声に彼はゆっくりと此方を向くと私の脚へ視線を落とした
「………其れ、はだけ過ぎじゃない?」
「………?…………っ………!!!」
彼の指摘に見遣ればしっかり纏めて捲り上げた筈の裾が開いて太腿迄露出しており危うく下着を晒す所だった
私は目を見張る程のスピードでキッチリ裾を整えると開いてしまわない様にしっかりと布を太腿に挟み込んだ
「………すみません」
「別に」
謝罪に対して事も無さ気に短く返した彼はまた水面を眺めていてホッと胸を撫で下ろす