第118章 月夜の湯煙
お猪口に注がれた地酒らしい其れを控え目に乾杯して料理を一口で食べてしまう
仄かに香る柑橘の香りとしゃきしゃき感は柚子だった様で爽やかさが鼻を抜ける
白身魚を人参でくるりと巻いた其れにあんがかかっていた様で上品な味が喉を通った
「美味しいです!!」
「うん」
一品ずつ運ばれて来る料理はまさに贅沢の限りを尽くしており伊勢海老の天ぷらやお刺身、フカヒレの和風クリーム鍋、特選A5ランク神戸牛のステーキ等
食べる物全てに舌がとろけそうに成った
幸せとは此の事を言うのでは無いかと思う程素敵な料理は心迄をもとろけさせる
そして其のどれもが酒と合い私達は一升瓶をあっという間に開けて気が付けば二本目を流し込んでいて創作デザートを食べ終える頃には身体がポカポカと火照っていた
「あーもう食べられへん!お腹いっぱいめっちゃ幸せ~!ご馳走さまでしたっ!!」
「沙夜子は食いしん坊だよね」
「………そうですね……」
「このお酒置いといて中庭でも見に行く?」
「はい!」
行儀悪くごろりと転がっていた私だが彼の提案に身体を起こす
満腹過ぎて身体が重いくらいなので少し動いた方が良いかもしれないと思ったのも事実、旅館内を楽しみたいと思ったのも事実だった