第117章 広がる世界の話し
其処には2つ並んだ洗面台
和な雰囲気を壊さぬ木目調の空間が広がっていて奥からは水音が聞こえた
覗き見ると大人5人程が余裕で入浴可能な広さの個室露天風呂があり源泉かけ流しなのか浴槽からは硫黄の香りの湯が止めどなく溢れている
「凄い!めっちゃ広々やし贅沢ですね!!!」
「晴れて良かったよ。雨だと沙夜子は寒いでしょ」
「ほんまですね!晴れて良かった!」
振り向いて目が合った彼はふぅっと息を吐くと
「部屋の探検終わったね」
と言って元の部屋へ戻ってしまった
私も後を追って座っている彼の隣の座椅子に腰掛ける
時刻は15時過ぎ
昼食は自宅で食べたしお腹が減っている訳でも無いが部屋に用意された御茶請けのお菓子を口に運ぶ
「………うんま……」
「……何味」
彼は慎重な性格をしている
見た事も無い物はあまり口にしないという事も一緒に生活して知った
「塩大福ですよ!あんこです」
「………アンコ」
彼は言うなり添えられていたもう1つの大福を手に持つ
「ほら、あの!お汁粉と一緒です!あれの固形です」
「……あぁ。」
彼は納得した様に口へ運び無言で食べた後に私を見遣り
「粉付いてるよ」
と、指摘してくれた
彼にお汁粉の例えをしていた時点で付いていた筈だがその時には指摘してくれなかった
スカートの時もそうだ
彼は気付いてから言葉にするのが少し遅い