第117章 広がる世界の話し
にこやかに案内された部屋に足を踏み入れると二人には広すぎる高上な造りの和室
お茶を二人分注いだ女性は彼と何か話した後に深々と頭を下げて出て行った
部屋を見渡すと目に付くのはどれもこれも洗練された物ばかりでたじろぐ私とは裏腹に腕に掛けていた上着をハンガーに掛ける彼は余裕たっぷりだ
「………凄い宿ですね………」
「そうかな。」
「………そうですよ………」
値段は怖くて聞けないが先に言ってくれていたらもっと上等な服で来たのに……なんて事も口には出さなかった
長い足を放り出して座椅子に腰掛けた彼は悠長な所作で湯呑みに口を付けると此方に視線を向けた
「上着ずっと着てるの?」
「………あ、脱ぎます。」
彼は何処か私の様子を伺っている様で
はたと気付く
せっかく彼が連れてきてくれた旅行
何時までも凝縮して固まっているのは失礼なのでは無いだろうか……
思い切り楽しんだ方が彼も連れて来甲斐があったという物だ
私は途端に肩の力が抜けた
平凡な私には異質な空間に思うこの部屋も彼が探し選び、そして予約してくれた部屋なのだと考えると嬉しくて自然と笑みが漏れた
「私ちょっと部屋探検します!」
「うん」
「イルミさんも探検しましょ!」
「………。」
私の声は静かな部屋に響いたが彼は黙って立ち上がってくれたのでどうやら一緒に探検してくれる様だ