第117章 広がる世界の話し
温泉街らしい真っ赤な橋や石造りの街灯や柳の木は趣があり何だか特別な雰囲気だ
連なるお土産屋さんや温泉まんじゅうの湯気の前を車で通り過ぎて小路に逸れる
明るく紅に色付いた木々は美しいグラデーションを風にそよがせてハラリハラリと葉を散らせる
坂を登り切った先には重厚感溢れる旅館が静かに佇んでいた
広々とした敷地は沢山の木々に囲まれ辺りに他の建物は見当たらず外観からも解る高級感に私は目を見開く
「はい到着。」
「あ、はい」
ゆっくりと停車した駐車場には数台高級車が並んでおり私達の乗って来たファミリーカーはかなり浮いていた
………変な汗をかく……。
立派なエントランスに入ると物腰の柔らかい女性に迎え入れられ敷地内の案内を聞きながらも私は辺りをキョロキョロしてしまう
旅館内は落ち着いた静かな雰囲気が漂っており其れを助長する様に他の宿泊客と擦れ違う事も無く静寂が支配している
広々とした中庭は見渡しても全貌が解らないくらいに広大で敷き詰められた小石は砂紋を描き本格的な枯山水庭園が造られていた
長く伸びる木目の廊下は其の色味から歴史を感じる事が出来る
そして気が付いたのは広々とした敷地の割に極端に部屋数が少ないという事だった
(……………ちょっと待って………ここめっちゃ高いんちゃうん………)