第116章 ドキドキのスカート
彼から"釣り合わない"なんて言葉が出て来るとは思いもしなかった
彼が私と同じ様な事を考えたりするなんて………
私は彼の言葉を何回も思い返しながらぼんやり待っていた
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肌寒い街を彼と行く
隣の彼は黒のパンツに白いVネックシャツに黒いジャケットと何時もよりパリっとした佇まいは凛々しい雰囲気で何処か冷たさが混ざっている
「何食べたい?」
其れなのに私に発せられた声は優しくて見上げると柔らかな表情を浮かべた彼と目が合い心臓はドキリと跳ねる
「………やっぱりイタリアンとか……イルミさんは?」
「其れで良いよ。俺良い所知ってるし」
「え………何で……?」
「前に行った現場の隣がイタリアンだったから。行った事は無いから味は知らないけど」
「成る程です……」
彼が店を知っているなんて言うので誰かと出向いたのかと不安に成ったが直ぐに胸を撫で下ろす
「そこ行きましょう!」
「うん。」
彼に連れられてやって来たのは小ぢんまりしているがお洒落なお店だった
少し暗い照明の中私達はグラスを傾ける
何時も通り淡白な彼だがその眼差しは穏やかで私の話しを何時までも聞いてくれていた
二時間程で店を出ると冷たい風が火照った身体を撫でた
時刻は22時過ぎ
機嫌の良さそうなサラリーマン達が駅に吸い込まれて行く中二人並んでゆっくり歩く
「ねぇ沙夜子。」
「はい?」
「もうちょっと飲まない?」
「え……?」
「行こう」
彼は真っ直ぐ前を見据えたまま声を漏らした
大きな瞳にはキラキラと街のネオンが映り込み揺れる
二件目にやって来たのはシックで落ち着いた雰囲気のバーだった
カウンターに二人腰掛け私はカクテル、彼はブランデーで乾杯する
「イルミさんが飲みたいって珍しいですね」
「たまにはね。」
「嬉しいですけどね!」
「そう。」
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彼女は自身の足で自宅迄帰ったものの支えが必要な程すっかり酔い潰れてしまっていた
普段と違う雰囲気を纏った彼女にすっかり調子を狂わされ酒の席に誘ってしまったのだが其れは口に出さない
玄関を開くと途端にへたり込む彼女
「……沙夜子。靴くらい脱ぎな」
「はーい!」