第116章 ドキドキのスカート
妙に荒い呼吸は焦る頭に酸素を送り込もうとする防衛本能からだろうか……腹を括り一歩踏み出したその時だった
「随分奇抜だったね。……紫」
彼の言葉に私は膝から崩れ落ちた
見てしまった事はこの際仕方がない。彼も不可抗力だった。
しかし衰弱し切った私の心に止めを刺すなんてあんまりだ………
「…………イルミさん………」
「なに」
「………紫ってなんですか?何の話しをしてるんですか?私にはさっぱり解らないなぁ………あー!解らないなぁ!!!」
「………なんだったかな。ごめん。忘れたみたい」
「あははは。それなら良いんですけどね」
「………」
私は野太い声でまくし立てると暫くうずくまったまま動けなかった
________"
その後正気を取り戻した私は何事も無かった顔で彼の隣に座った
彼はチラリと私の様子を伺った後無言を貫いている
…………辛い。
只彼をドキドキさせたかったという純真な乙女への仕打ちにしては世知辛過ぎる………
溢れるのは溜息ばかりでテレビから流れる笑い声にうんざりしていた
「沙夜子」
沈黙を破ったのは彼だった
普段の単調な声色にそちらを向けば彼は視線を合わせる事無く
「今日は何処かに行くの?」
と尋ねて来た
「…………?いえ、予定は無いですけど」
「ふーん。何時もと違う格好だから外出するのかと思った」
「あー………。」
確かに彼がそう思うのも無理は無い
何時もよりバッチリメイクの私を見て友人との外出予定があると思ったのだろう
「予定無いなら折角だし夕飯外にする?」
チラリと此方を見た彼
まるでデートのお誘いみたいだと思ったのは私の頭がオメデタイからだろうか
簡単に頬が緩む
「はい!行きましょう!」
「……解った。俺も沙夜子に合わせて着替えるよ」
「え……?別にそのままで「作業着だと釣り合わないでしょ」
「っ………」
私を他所に着替えを持って洗面所へ消えた彼を見送る