第116章 ドキドキのスカート
水道を閉めた音がしていよいよ御披露目
私は普段と何ら変わり無い風を装い鞄からお弁当箱を取り出した
「今日は帰り早かったんですね!」
「うん」
真っ直ぐに視線が合った私達
(………あれ?……ノーリアクションですか………?)
私を通り過ぎて座椅子に座る彼と交代してキッチンに立つ
感情が希薄な彼の事だから大きなリアクションは期待していなかった。しかし何も触れられないという事態はどうしようも無くいたたまれ無い気持ちが込み上げる
(…………あかん。心折れそう……)
私は落胆している気持ちを取り直すべく鼻歌を歌ってみる
モチベーションは下がったままだが彼から見ればご機嫌に違いないなんて考えていると
「香水。」
という単語だけが耳に入った
私に投げ掛けたというには余りにも小さな呟きに息を飲んでいると
「沙夜子香水付けてるよね」
今度ははっきりと私に掛けられた言葉だった
やっと反応を示した彼に声を弾ませる
「はい!良い香りじゃないですか?」
「どうかな。俺香水嫌いだから解んない」
単調ながら何処か不機嫌な声が返ってきた
洗い物中な為に手元しか見ていないが振り返ってもきっと無表情なのだろう
………しかし彼が香水嫌いだとは………ドキドキさせる筈が不快感を与えてしまったのは確実で
出鼻を挫かれた私は何だか泣きそうに成りながらも然り気無く手首を洗った
ほんのり香るくらいしか付けていないのが幸いだった