第116章 ドキドキのスカート
10月のある日
私は『彼をドキドキさせるゾ!』作戦を始動すべく仕事からの帰り道に普段絶対に付けない香水を付けた
良く良く考え無くとも私は何時も彼にドキドキさせられて挙げ句からかわれているのだ
私は彼に想いを寄せる一人なのだが彼は其に気付いていないにせよからかうなんて質が悪い
友人がこの香りで彼氏を射止めたと豪語していた代物は爽やかながら甘い香りだった
私より先に仕事に向かう彼を見送り私は普段着ないタイトスカートに白いシャツとまるでOLさんの様な格好で家を出た
滅多にスカートを履かずに過ごす私だからこそ成し得るギャップというやつを狙いたかったのだ
唇には強気な真っ赤なリップ
いつもより頑張ってしまった為に少し濃く成った目元
カールした髪は癖毛故だが藤木にはまるで飲み屋のお姉さんだと言われてしまった
………しかし。私に色気等皆無
彼のルックスから隣に並ぶにはルパン◯世の不◯子ちゃんみたいな色気ムンムンな女性がしっくり来ると思う
従って私みたいなタイプは不釣り合いという訳だ
私みたいな者がいくら頑張ろうと其れは変わらぬ事実だが努力しないよりは良いと思い一人頷いているとサラリーマンにガン見されていた
(…………こっち見ないで……)
ヒールを鳴らして階段を上がり玄関扉を開くと彼は珍しく私より早く帰宅しており丁度お弁当箱を洗っていた
「おかえり」
「ただいまです!」
視線を寄越しもしない彼は普段と違う私にまだ気付いていない様だった
果たしてどんな反応を示すのか
今更に成って不安になったりする私は中々小心者だ