第115章 バブルバス
視線を反らして泡を集める
ただ熱を集める頬が恥ずかしくて泡ばかり見ている私だが
胸の中はうるさい程に騒がしく余裕な彼に苛立ちを覚えて唇を尖らせた
…………其れにしても泡で猫を作るのは中々に難しい………
大まかな形が作れても目や口が作れず気がつけば四苦八苦していると
「出来た」
彼の声が響いた
私はまだ満足出来る完成度では無かったが中断して彼の作品を見遣ればどこがどう成っているのか全く解らない泡の塊があった
「猫……?」
「うん。ここが顔で此れが身体だけど」
彼の絵を思い出す
彼に美術の才能は皆無な様だ
「………。」
「………。」
気まずい沈黙が流れる中
「で、沙夜子の猫はこれ?」
なんて言いながら彼は突然上半身を湯船から引き上げた
「うぉおおおおッ!!!」
「………別に湯船からは出ないから安心しなよ」
仰け反った私の反応に冷ややかな視線を向けた彼は溜息と共に湯船から身を乗り出して私の作った猫らしき物を眺めた
「なにこれ。」
引き上げた事で泡の付いた身体は外気に晒され屈強な筋肉が露になりチラリと覗く腹斜筋にクラクラと目眩を覚えた私はそそくさと風呂場を後にして思わず扉を閉じた
「失礼しましたぁぁぁぁッ!!」
「………沙夜子?」
くぐもった声が聞こえた気がしたが私には一切の余裕が無かった
色気で殺される………そう思ったのだ
何より上半身を露にした彼がチラリと寄越した眼差しは熱っぽく魅惑的ながら危険な香りを感じたからだった
洗面所の扉を閉じてずるずると崩れた私は騒ぐ胸を抱えて暫くぼーっとしていた
「沙夜子は芸術の才能が無いね。あれじゃ豚だよ」
なんて髪の水気を拭いながら溢した彼に笑顔を向けながら
(私ばっかり振り回されてる………むかつく!!!!絶対振り回したるっ!!!)
なんてリベンジを心に決めたのは秘密だ