第114章 些細な日常
「ねぇ沙夜子、知ってた?ポテトチッ◯スの新しい味が出たんだって」
「………へぇ、行きましょうか」
「………期間限定なんだって」
「………夕飯の買い物は済ん「梅紫蘇味なんだって………どんな味かな?」
彼は白々しい程にあどけない表情を浮かべて私を真っ直ぐ見詰める
其の表情に弱い事を彼自身把握しているのかもしれない
実際私にとっては効果覿面なのだ
「……カゴへどうぞ」
「わーい。」
彼は棒読みの歓声を上げると満足気にカゴへスナック菓子を入れると然り気無く私の腕からカゴを拐い取り会計を済ませた
スーパーからの帰り道
「イルミさん………あの顔わざとやってません?」
「あの顔ってなに?どんな顔?」
私に一切の荷物を持たさず長ネギが突き出した袋を腕に下げた彼に屈み込まれて息を飲む
まるで作り物の様に整った美しい顔は僅かに瞳を細めて私を射抜いた
「………なんでもないです……」
「そう。」
絞り出す様に私が言う頃には彼は歩き出していて
(……絶対わざとや…………)
夕日に照らされて艶めく彼の黒髪を追った
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夕飯を準備する
ちゃぶ台に出汁の入った鍋をセットしてボウルに入った具材を運んでいると彼は怪訝な視線を落としていた
「………?」
視線の先を辿れば彼の身に付けている靴下の中指部分に穴が空いていた
彼は鋭い視線で其を見遣ると素早く脱ぎ丸めてゴミ箱に向かう
「……イルミさん!縫ったらまだ履けますよ!」
何故だか私の声は嫌に響いた