第114章 些細な日常
「えー!!じゃあイルミさんもやって見てくださいよ!」
手元の缶を手渡すと彼は思い切り眉を潜めた
「…………」
「…………」
すぅーと息を吐いて思い切り吸った彼はゆっくり瞬きをした後に口を開いた
「………コレデマンゾク?」
「ふふふっ……」
「ソンナニオカシイ?」
妙に甲高い声は彼の無機質さに磨きを掛けていてどちらかと言えば不気味なのだが彼が先程とは違ってノリノリな為に笑ってしまった
「……暫くしたら戻るんだね」
「はい!面白いでしょ?!」
「ウン」
またヘリウムガスを吸い込んだらしい彼は瞳を輝かせて頷いた
「ネェ、コレツカッテクロロニイタズラデンワシヨウヨ」
「え!?」
「………だめ?」
なんて小首を傾げる彼は猫目がちな瞳をキラキラさせてあざとい程に可愛らしく私は抗う術を持たない
彼は以前から私を驚かせたりとお茶目さんな面を持ち合わせている
どうやら彼はイタズラ好きな様だ
「………駄目というか………普通にバレませんかね………?」
「うーん。………そうだね」
彼は納得した様子を見せると何故か自身の段ボールの中へ缶を仕舞った
……………何故?とは思ったが彼は無表情ながらヘリウムガスを気に入ったのだろう
堂々と自分の段ボールに仕舞う彼の背中が可愛いのでそのまま黙っていた
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私は掃除機をかけている
彼は私に頼まれた布団を軽々持ち上げベランダに干してくれていた
徐々に肌寒くなる昨今、そろそろ冬布団に変えようと思った次第である
この間迄使っていた薄い夏布団が風に靡いて洗剤の香りがふんわり室内へ流れた