第113章 彼女の気持ち
「………じゃあ此方で出会えた私はラッキー!!!イルミンといっぱい話せるし触れるし構ってもらえるしハッピー!!!」
「沙夜子は呑気だね。その発想は無かったよ。」
乾いた笑みを漏らした彼の横顔を見遣ると対向車のヘッドライトに照らされて美しい容姿が浮かぶ
何処か遠くに感じる彼に無性に触れたくて頬に手を伸ばせば簡単に触れてしまった
「なに」
「なにもないよー!」
「沙夜子、手暖かいね」
「酔ってるから!」
「そうだね」
彼は言うと私の手に手を重ねる様に頬からやんわり離されると指を絡め取られてしまった
緩くシートに落ちた手は未だ彼の手に包まれておりドキドキと胸が高鳴った
「……ドキドキする」
思わず出た言葉だがふわふわした頭では其れほど気に成らなかった
「ふーん。」
「イルミンは?!イルミンは?!」
「どうだろうね」
触れられて緊張したりドキドキするのは私だけなのだろうか……そんなのは何だか悲しい上に癪に障る
私はシートベルトを思い切り伸ばして上体を乗り出し彼の胸に思い切り顔を引っ付けた
「ちょっ……危ないよ」
「………」
「ねぇ、聞いてる?」
頬を寄せて耳を立てるとドキドキと通常よりも早い鼓動が鳴っていた
彼も私と同じ様にドキドキしてくれているのか其れとも運転がしにくい状況にドキドキしているのかは解らないが彼の香りを感じてクラクラする
「あとさ、変な所に手付かないでくれる?」
彼の言葉に疑問符が浮かび視線を手元に下げると彼と指を絡めている手とは逆の手が彼のがっしりした内太腿の付け根に付かれていてなかなかに際どい位置だった
私は慌てふためき離れる
「……ごめんなさい」
「別に良いけど。で、どうだった?」
「イルミンもドキドキしてた!」
「ふーん。」
シートに深く腰掛けて繋がれた手を繁々と眺める