第113章 彼女の気持ち
先ず運ばれて来たのは前菜
約10種四季折々の野菜をふんだんに使った料理がそれぞれ小皿に乗って運ばれて来た
見た事も無い野菜が沢山で何れから手を付けるか迷う私とは裏腹に彼はスムーズな所作で小料理を口に運ぶ
写真撮影はテーブル上だけに限られているので美しい所作で食事する彼を残せないのは残念だがその分ガン見して目に焼き付ける
注がれた赤ワインを一口含めば芳醇で上品な香りが鼻を抜けた
「っ!!イルミさんイルミさんイルミ!!!!これめっちゃ美味しいです!」
「そう、良かったね。」
その後も次々運ばれて来た料理をじっくり堪能した
野菜の美味しさ際立つ料理が中心だったが真鯛のしゃぶしゃぶと大根のマリネや淡路牛モモ肉の炭火焼き等ジューシーなのに胸焼けしないボリュームに舌鼓を打った
デザート迄堪能する頃には彼の言葉通り私はワインを綺麗に開けていて食事を始めてから実に二時間半が経っていた
お会計は彼が料理を追加したりしていたので恐ろしい値段だったが宣言通り余裕のお支払いだった様だ
店を出て車へ乗り込むと一気に肩の力が抜けた私はすっかり酔いが回っていた
「イルミさーん」
「はい、水」
「いつの間に?!」
「予め想定していたから。飲んで」
「イルミンは用意周到だなぁー!流石有能だなぁー!」
「………。出発するよ」
ゆっくりと走り出した車
日が落ちて暗くなった景色が窓の外を流れる
「イルミンはー可愛い子~♪イルミンはー素敵な子~♪」
「なにそれ」
「イルミンのテーマ!」
「変だし止めなよ」
「やだ!!イルミンはーセクシ~♪イルミンは強~い~♪」
「沙夜子」
「なに~♪」
「………沙夜子はさ、きっと俺の世界で俺に出会ってたら俺の事を怖がるんだろうね」
「………え?」
「だって俺は殺し屋だし、向こうの世界で沙夜子と出会っていたらまず関わる事も無いから俺は沙夜子に見向きもしないだろうし」
彼が何故そんな事を言うのか理解出来なくて泣きたい気持ちになった