第112章 植物館に秋の風
幸せ一杯な二人を祝う様に飾られた装飾は白が基調になっておりハートを型どったレリーフに純白の花が咲いていた
彼はこの雰囲気が式場であると気付いただろうか……なんてチラリと盗み見ると彼も何かを察した様で一瞬歩みを戸惑った様子だが無表情に一歩踏み出した
「綺麗ですね!華やかやし!」
「女性が好きそうだよね、こういうのは」
「ですねー。結婚式……ですかね?」
「………そうなんじゃない?」
「植物館内で結婚式ってすごい斬新ですよね!」
「ふーん。」
会話を交わしながらも歩みを進める
式場と成っているスペースも歩いて見学出来る様に成っており赤い絨毯の上を進む
二人肩を並べて進めば私達が新郎新婦に成る妄想が脳内に広がったが
気が付くと彼は後ろの長椅子を振り返っており瞳がすっと伏せられると背中を向けてそそくさと式場から出て行ってしまった
私も慌てて後を追う
脳内妄想は一瞬でかき消えて切ない気持ちがぎゅっと胸を締め付けた
いくら妄想しようが其れは私の勝手だが想いも伝えられない私達の関係で其れはあり得ない事で
彼との別れは目に見えて日に日に近付く一方なのだ
もしも想いが通じたなら、なんて願望すらも無意味な物になる
彼と結ばれてしまったなら余計に別れが辛くなるのは明白だった
追い付いた彼をチラリと盗み見るがやはり無表情で何を考えているのかさっぱり解らなかった
その後も植物館を見て回ったが私はすっかり気分が落ち込んでしまい素直に楽しめないまま後にした