第112章 植物館に秋の風
ぎっしり敷き詰められた帆立貝の貝殻の上を流れる水は太陽光を反射してキラキラと輝いていた
辺りに人の気配は無く貸し切り状態の為に自身のヒールの音がコンクリートにやけに響いて水音と混ざった
しゃがみ込んで覗く私の背後に立っている彼へ言葉を投げ掛ける
「これだけいっぱい貝殻集めるには毎日帆立ばっかり食べてもかなり時間かかりますよね………」
「そうだね。一人じゃ厳しいかも」
呆れられるかと思ったが彼は意外にも穏やかな声色を返した
「イルミさんと私やったらいけますかね」
「沙夜子が食いしん坊だから頑張ればいけるよ」
「私よりイルミさんの方がいっぱい食べますけどね」
「そうだね」
「イルミさんって見た目少食っぽいから最初びっくりしました」
「そう?別に普通」
なんて会話を交わしていると噴水が上がった
二人しか存在しない場所で騒がしく水面が揺らぐ
「行こうか」
「はい!」
そう言ってしゃがんだ私に手を伸ばした彼の手をしっかり掴んだ
其の温もりは直ぐに離れてしまったが彼の然り気無い優しさに心が温かく成る