第112章 植物館に秋の風
10月8日
コンビニで購入したパンを朝食に貪りやって来たのは淡路夢舞台
有名な建築家によってデザインされた広大な公園とリゾート施設がある
駐車場に車を置いて外へ出れば暖かい日射しとは裏腹なひんやり冷たい風が吹く
秋晴れの空は淡い青を湛えて薄い雲を流していた
車中泊、という事は着替えも車内
布団に潜って懸命に衣服と格闘する訳だが彼は其の行動すらも素早く
私は何時までももたもたしていた
私が単にどんくさいというのもそうだが理由としては車内で着替えるには窮屈な洋服だったからだ
彼がご褒美に購入してくれたネイビーのシックなワンピースはボディーラインのはっきり出るもので
寝転んだまま着るのは困難を極めた
格闘する事数分でやっと身に纏ったワンピースはやはり普段の私とはかけ離れて大人びた雰囲気を演出してくれる
彼の革靴の音が鳴る
控えめな緑が風に揺られて葉が一枚地面に落ちて行く中で彼の漆黒を湛えた髪はふわりと風に靡いた
自然豊かな光景に深呼吸すると爽やかな香りが胸一杯に広がる
「良い天気で良かったですね!なんか清々しい気分です!」
「うん」
「とりあえず百段苑ですね!テレビで見たとこ!」
「そうだね」
ゆっくりと隣合って歩く
彼は然り気無く歩く速度を落としてくれた
先に見えて来たのは"貝の浜と噴水"