第109章 同居人を迎える心構え
彼の言葉にごくりと唾を飲み込む
「彼は優秀なハンターなんだ、軍曹が家に2、3匹居れば半年でゴキブリは壊滅するくらいの狩猟本能がある。」
家から全てのゴキブリが居なくなる………私は彼の言葉を促す様に頷いた
「ゴキブリの素早さに対応可能なのは勿論だけど感覚神経が発達していてゴキブリに先に気配を気取られるケースは稀らしい。」
……………凄いでは無いか………。とは思うが恐ろしい外見にまだ軍曹を放つ気には当然成れない
「彼は好奇心が旺盛らしくてね、食事中でも他のターゲットを見付けると直ぐに狩りに行く。つまり確実に敵の数を減らす事が可能なんだよ。」
………彼?とは思ったが他の疑問を投げ掛ける
「……………でも親方に攻撃したりしないでしょうか……私よじ登られたりしたら気絶しますよ」
「うーん。生態としては自分より大きな動物には臆病なんだよ。だから基本的に暗い物陰で生活するし生活圏が被る事は無いよ。ハムスターを飼ってる家庭でも普通に共存してる例があったから補食対象じゃないと考えられる。………但しパニックを起こした場合方向感覚が解らないまま走ってしまって接触する可能性は0では無い」
「………生活圏ってなんやねん………。………0では無いのが怖すぎます……。」
「毒も勿論無い。しかもね、消毒作用のある唾液で身体を擦ってるから清潔なんだよ。ほら、今もしてる」
「…………清潔って言われても……。」
長い足をなぞる様に擦っている蜘蛛を見遣り思わず呟きが漏れてしまった