第12章 摘み取るなら早い内
私はお正月中にネット応募していた居酒屋へ面接を受けに行った
忙しいから明日からでも!と、即採用を頂いて帰った
帰宅すると明るい室内に新鮮さを感じる
今の季節部屋へ帰ると暗い室内はシンと冷えた空気に包まれ物悲しくなるのが恒だが
「おかえり」
「ただいま!」
人が出迎えてくれる事がこんなにも暖かいものなのだと思い出す
「今日何処か行かれました?」
「出てない。ずっとこれ」
「あぁ!捗ってますか?」
小さなちゃぶ台一杯に広げたドリルには丁寧に書き込まれた字が並んでいた
「うん。……………これって学校とかでも使ってるの?例文が全部変だけど」
小学校6年分のドリルを購入したのだが、開いているのは1年生の物の様だ
ドリルに書かれた例文はこうだ
【花】
ぼくのうんこは花のかおりだ
流石うんこ漢字ドリル
読み仮名で書き込まれた"はな"の文字が一年生とは程遠く綺麗で余計にシュールだ
笑わない様に頬の内側を噛む
「はい。学校で使いました」
「ふーん」
咄嗟に嘘を付いてしまったのは単に機嫌を損ねたく無いのと、買い直しを要望されるのを恐れた為だ
納得した風なイルミさんはまたドリルに向かう
【貝】
貝もうんこをするのかな
と書かれた例文に真顔で読み仮名を書き込む彼を見て笑いを噛みしめつつキッチンへ向かった
これ以上見ていたら吹き出しそうだ