第109章 同居人を迎える心構え
「…………はぁあ~………イルミさんが帰って来てくれて良かった………。夏場は出るイメージやけど出て来んから油断してました。わざわざこんな時期に出るとは…………油断大敵ですね………ありがとうございました」
「………別に。」
突然現れた敵との戦いは其れにて終了と成った…………………
私はすっかり奴の事も忘れて平和に過ごしていたのだがこの日私は再び恐怖を思い出す
「これ沙夜子にプレゼント。新しいペットだよ」
彼がまさかペットを連れ帰る等予想だにしていなかった私は彼の元へすっ飛んだ
彼は親方と接する事で随分と人間味が出て来て小さな命を守る喜びが育まれたのだろうか……なんて考えると胸が温かくなった
「ペット………ハムスターですか……?」
彼は仕事用にお弁当等を持ち運ぶバッグを持っているのだがゴソゴソと中身を漁っている
然程大きくも無い鞄に入る程の小ささのペットを想像して親方も居るので新たにハムスターを迎えたのだろうかと推理する
しかしハムスターは縄張り意識が強い為に新たにケージを購入する必要がある
何処にスペースがあるだろうか、と部屋を見渡す
「はい、こいつ。」
「っ……………!!!!」
彼の言葉に視線を戻せば彼の手にあったのは百均等で売られている様なプラスチックのタッパーだった
問題はその中身だ
全長10センチ程の大きな蜘蛛がじっとしていて絶句する
茶色の胴体から伸びる長い足が巨体に見せておりタランチュラを思わせる恐ろしく生理的に受け付けない風貌だった