第108章 男は今日も苦悩する
自身が如何に近すぎ無い距離を保ち必要以上に触れず彼女の肌から視線を反らし入浴後の姿から気を反らしているか等全く伝わっていないのだ
意図的に愛欲をひた隠しているのは自身の配慮だが全く持って虚しく成る
……相手が自身で無ければこんな風には行かないというのに……
…………此れは由々しき事態である
彼女の温もりを布越しに感じながら息を吐く
「………ねぇ沙夜子、これも知ってる?擽ったい場所は性感帯なんだって。沙夜子は膝と耳と脇腹だっけ?」
「………っ!!!!……知りませんでした。すみませんでした……」
わざと彼女の手首を掴み真っ直ぐ見据えれば途端に可愛らしく染まる頬
やんわり手首を解放すると彼女の手は離れて行った
自らタブーに触れる事で過度な接触回避をする作戦はどうやら成功した様で先程迄の勢いが消え失せた彼女は随分汐らしく成った
赤面した顔を余程見られたく無いのか隠す様に俯く彼女
「喉が渇いたんだけど」
「あ、お茶持って来ます!」
直ぐにキッチンへ向かう背中を視線で追いつつ本当は微塵も水分を欲していなかった
(………全く世話が焼ける……)
その後二人してアニメを観賞した後に彼女は
「イルミさんって身体柔らかそうですよね」
また脈略無く話し始める
「私前屈出来ないんですよ。身体硬くて!毎日ストレッチしたら柔らかくなります?!」
こうして日々沙夜子無駄知識が増えて行き
そして
「今度で良いからイルミさんの前屈見てみたいです!!!」
「………今度ね」
「やったー!!!楽しみです!」
「……理解出来ない。」
屈託無い笑顔を向けられて明日もきっと振り回されるのだろう……