第108章 男は今日も苦悩する
「…………良いけど無駄だよ。本気で俺に効くと思ってるの?」
「だってこちょこちょは万人が笑顔になるものじゃないですか」
すっとんきょうな返答を返されてしまった
立って欲しいと言われたので立ち上がれば今度は手が届かないので座れと言い出す
…………本当に馬鹿馬鹿しい。
馬鹿馬鹿しい言動に素直に従い振り回されている現状に自身は一体何をしているのだろうかと疑問に思うが答えは至極簡単で彼女が望んだから、という何ともらしくないものだった
「失礼します」
「………。」
彼女の手が触れる
自身とは違う体温と柔らかく女性らしい丸みのある手はその細くしなやかな指先を懸命に動かした
脇や脇腹、首筋、耳元、膝に足裏
当然ながら微塵も笑い声等出ない
「………え、死んでる………?」
「…………はぁ……生きてる」
「私膝とか耳とかめっちゃ擽ったいんですけど。横っ腹とか撃沈しますよ普通」
唸りながら眉を潜めた彼女は更に脇腹へ触れる
「………嫌いな相手に擽られても人間は擽ったく感じないらしいよ」
「…………っ」
意地悪をしたかった。
彼女が自身にどういった感情を抱いているのかははっきりと把握していないが少なからず好意的だと認識している
自身と同じ感情を抱いている可能性は70%前後と言った所だろうか
敢えて放った言葉に彼女はおずおずと手を引いた