第108章 男は今日も苦悩する
10月1日
「イルミさんにもこちょこちょって有効なんでしょうか」
「は?」
彼女は何時も脈略が無い
そんな話題が持ち上がる様な要因が有っただろうかと記憶を振り返る
先程迄彼女は必死に最近豆が好きに成った等と言う全く持ってどうでも良い事を熱弁していた筈だ
豆を原料にしている物も好きらしく納豆や豆乳にも関心が有り豆類のスナック菓子も好ましい、しかしながら豆ご飯だけは好きに成れないという事を語った彼女はしみじみと
「豆腐も美味しいですよね。最近この歳に成ってから急激に豆腐が美味しくてね。いやー不思議」
彼女の趣向についての無駄知識が増えた自身は適当に相槌を打ちながらもぼんやりと豆を思い浮かべたりした
全く持って脈略が無い
「だってこちょこちょって絶対耐えれへんじゃないですか。」
「………。」
(………沙夜子は馬鹿だな。毒だって電流だって通常は耐えられないんだから擽ったい事なんて造作も無いって解らないかな。)
とは言葉にしない
自身を見詰める彼女の瞳はあからさまに爛々と輝いているにも関わらず其れを悟られまいと真剣な風を装っている
実に滑稽だ
「…………試してみても良いでしょうか?」
答えるより早くフライング気味に伸ばされた手