第107章 室内の二人
口角をぐっと指で上げればニッコリとした口元が出来上がった
しかし大きな猫目は真っ直ぐ私を見据えて笑顔とは程遠い
………しかしながら………なんてスベスベな肌だろうか
キメ細やかな肌は何時までも触っていたい手触りで思わず両手で頬を包み込むと彼は僅かに眉を反応させた
「イルミさんスベスベですよね……」
「酔ってるね。」
「良いなぁ………イルミさんは全身スベスベなんでしょうね………」
と言葉にしてからシャワールームでの出来事を思い出して途端に体温が上がった
瞬間に手を離そうとすると彼の大きな手に制止されて彼の頬から手を離す事は出来なかった
「…………沙夜子の方がスベスベだし柔らかいよ」
彼の瞳に僅かに熱が籠ったのが解った
「…………イルミさ「ねぇ沙夜子、また二人で旅行に行かない?」
「………へ?」
彼は深く息を吐いた後に何時もの淡白な表情を浮かべた
………旅行と言われても今している貯蓄は12月の最後の旅行用に貯めている物しか無い。彼からの思いもよらぬ突然のお誘いに戸惑いを隠せない
勿論行きたい。しかし現実的に考えるとその予算は何処にあるのだろうか
解放された手はするすると彼の肌を滑って床に落ちる
「実はね。お遊びで始めたFXってやつでちょっとまとまったお金が入ったからさ」
「えっ!」
彼の口からFXなんて言葉が出てくるとは思わなかった
FXとは簡単に言えばお金に対する投資であり"お金を両替している"と考えた方が分かりやすい
FXの取引の例を上げると、日本円からアメリカドルへ両替して、その後しばらくして、両替したアメリカドルを日本円へと変えると言う具合に各国の通貨を両替していくような取引の事だ
知識としては持っているが私にはちんぷんかんぷんで取り組んだ事は無い。
「ほらこれ」
スマホを操った後に差し出された画面には26万円と表示されていた