第107章 室内の二人
私はその後床に転がり少し眠り
彼は漫画を読んでいた
思い思いの時間を過ごした私達は夕方目を覚ました私が夕飯を食べようと声を掛けた事で再び隣り合わせでテレビ画面を見ていた
室内は相変わらず灯りを点けずすっかり暗く成ったが何だか映画館の様な雰囲気にワクワクする
ちゃぶ台の上にはワイン瓶とワイングラスが2つ並び
夕飯はレトルトの牛丼と麻婆丼だ
テレビから流れるのはレンタルしたスクールオブロックというコメディー色の強い洋画である
ジャッ◯・ブラックのハチャメチャ演技で作られた主人公デューイは売れないバンドマン。ロック命のデューイだが突然バンドをクビになり、お金に困った果てに臨時講師の友人に成り済まして名門学校の講師を始める
最初は全く反りの合わないデューイと生徒達だったが段々と距離が縮まり、奇妙な絆が生まれて行くロックの名曲がぎっしり詰まったユーモラス溢れる作品だ
物語は次々展開されて行く中どんどん進むお酒
「ぶふっ!!!」
「汚い。」
「だって今のシーンヤバいじゃないですか!」
「あっそ。」
「え、面白くないですか……?」
「面白いんじゃないかな。」
「イルミさんってお笑いとかで笑いませんよね。多分漫才とか見に行ったら芸人さんが傷付くレベルですよ」
「そうかな。普通に笑うけど」
「………笑顔あんまり見た事無いです」
隣を見遣ると彼は画面から漏れる光に照らされて美しいシルエットを浮かばせ見惚れていると
「………うーん。こんな感じ?」
彼は暫し考えた後に此方を向くとニッコリあからさまな作り笑いを浮かべていた
「っ…………」
無理やりに細められた目元とつり上がった口角は影を作り何とも不気味で絶句してしまった私に彼は感想を求める様に「どう?」と呟いた
「…………不自然過ぎてちょっと怖いかな………」
「………。」
彼は瞬間的に無表情に成った
「なんやろ……もっとこう………」
私が手を伸ばすと簡単に彼の肌に触れる
彼は微動だにせずされるがままでいるので甘えさせてもらう事にする