第107章 室内の二人
「………そうですか。この映画私にはグロいです……」
「…………まぁ沙夜子にはそうなのかな?俺は普通」
「……ですよね。ゾルディックですもんね」
私の言葉の後にパリパリとスナック菓子を頬張る音が鳴る
「………ゾルディックだからだけど。でも俺は俺だよ」
「そうですね」
彼の言葉は何処か悲しく幼い子供が「僕を見て」と訴える様な響きを感じて彼を見遣った
「………。」
「イルミさん」
「なに。」
「一口ください」
彼に差し出されたポテチを受け取り口に運ぶ。塩辛くてしょっぱかった
「………DVD疲れました」
昼を過ぎておやつ時前
苦手なホラーとグロテスクな映画を見てどっと疲労感を感じた私は一時休息を求めた
「……そう。何もしなくて良いんだから。適当にテレビ付けよう」
彼は慣れた手付きでリモコンを操り画面に映されたのは再放送の旅番組だった
次いで開かれた袋
手に持たれていたのはハッピー◯ーン
彼はまたしても躊躇無くバリバリと口に運ぶ
起床時よりも随分暗く成った室内に綺麗な桜の景色が広がる
「綺麗ですね!また行きましょうよ!」
「いつ?」
「来年……………は無いんですよね………」
「うん」
思わず発した言葉は自身に多大なダメージを与えた。
………来年は無いのだ。今しか彼との時間は無い………
私は残された時間で何が出来るだろうか
悲しくて泣き出してしまいそうな気持ちを必死に殺して旅番組を見た
どの景色を見たって綺麗で、彼と眺めたいと思う度に身体が裂けて無くなってしまいそうに胸が傷んだが決して泣かなかった
隣の彼は相変わらずずっとハッピー◯ーンを食べていた