第106章 50センチの距離
彼の所作は実にスムーズで本当にシェフに成れるんじゃ無いだろうか……なんて見惚れていると
「あーん」
「えっ!?」
「味見して」
彼は菜箸に掴んだ玉子焼きをひと切れ差し出した
照れながらも噛り付く
大きくて半分程頬張るとふんわり優しい味が広がった
「っ……美味しいです!」
「そう。良かった」
彼は呟くと残った半分を口へ運んだ
「悪くないかな」
無機質な声を聞きながら私は気はずかしくて視線を床に反らしてしまった
彼はその後ベーコンのアスパラ巻きを作り、ウインナーを炒めるとブロッコリーを湯がいてあっという間にお弁当に詰めてしまった
「完成」
「おぉ!イルミさん凄い!!!」
彩りに緑も取り入れたお弁当にはプチトマトが添えられて実に可愛らしい出来栄えで拍手を送る
「あ。」
「え……?」
「朝ごはん忘れてたね」
「あ……ほんまですね……」
「外で食べる?」
「ですね」
私は直ぐにキッチンを飛び出して身支度を整えた
起き掛けから素敵な光景を目にした私の気分は高揚していて足取りは軽い
「行きましょう!」
「うん」
まさか彼からピクニックに誘われるとは思っても見なかった
何処へ行くのだろう……しかも彼の手作り弁当………正に至福………