第106章 50センチの距離
9月23日
目を覚ますと隣の布団に彼の姿は無く部屋を見渡すが全くの気配を感じず疑問符が浮かぶ
とりあえず枕元のスマホを覗く
彼からの連絡は入っていなかった
(…………何処行ったんやろう……?)
ぼーっと彼の連絡先を眺めて電話するか否か悩んだがあまり働いていない思考は容易に指を動かし彼へのコール音を鳴らす
『もしもし』
「……もしもし、イルミさん何処ですか?」
起き掛け第一声だった為か掠れた声に彼が僅かに笑みを漏らした様な音が伝わって電子端末越しだが耳元に聞こえる彼の声にドキドキしてしまう
『食材が無かったからスーパーにね』
「あ、すみません…」
『別に。……コンビニ寄れるけど何か要る?』
「大丈夫です」
コンビニから家迄徒歩3分の距離
彼の居場所を頭に浮かべているとガチャガチャと玄関から音が鳴り驚きの余り飛び起きる
………私をつけているらしい不審者かもしれない………彼に習った技の出番か?と脳内は騒がしいが肝心の身体は恐怖心から一向に動かず心拍数ばかりが上がる中
『ただいま』
「っ………!!!」
顔を覗かせたのは彼だった
「~っ……めっちゃびっくりしたぁあ!!!」
「……ごめん?」
言いながら通話を終了させた彼の腕には買い物袋が下がっていた