第104章 振り回し回され
「終わっちゃったけど……他には?」
テレビを付ける事も無く私の我が儘を聞いてくれようと向き合ってくれる彼の気持ちが嬉しく、それと同時に申し訳なくなった
「えっと………例えばイルミさんが私みたいに我が儘言う立場やったら何を言いますか?」
「…………うーん。そうだな………」
彼は私の唐突な質問に首を傾げた後に
「秘密」
と言った。何故秘密なのか……と不思議に思ったがそれ以上の掘り下げを許さない拒否を含んだ声色に私は唇を閉ざした
その後掃除を手伝って貰う事になり几帳面で気真面目な彼は飲み込み早く完璧に清掃をこなしてくれた
そして
「私の最後の願い事は、楽しく飲む事です!」
「だろうね。」
宅配ピザを注文して彼と乾杯した
彼は珍しく自ら酒を煽り私の下らない話に何時までも相槌を打ってくれていた
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スヤスヤ眠る彼女の寝息を聞きながら一体何度こうして眠れない夜を過ごしただろうかと考える
今日は突拍子も無い彼女に散々振り回された1日だったと振り返り
案外満更でも無く楽しかった様に思う
しかしながらお願いの1つにキスやハグがあっても良かったのに……なんて自身の願望に頭を掻く
隣を見やれば眠る彼女の首筋にはまだくっきりと傷痕が残っておりそっと指でなぞれば彼女はくぐもった声を漏らして擽ったそうに身動いだ
あの日からヒソカは姿をくらませている
彼女が居酒屋で働いている間ずっと捜索しているが手掛かりすら掴めずに歯痒さばかりが募って行く
彼女の首筋に残した傷痕は室内では隠されず痛々しく目に映る
其れと同時に甦る柔肌の記憶に愛欲的に彼女を求めて疼く身体を抑えては溜息を付く
本能的な欲望だけでは無く彼女の心迄もを求める欲求は複雑に絡み自身を悩ませた
「………あーあ。俺相当ヤバいかも」
ポツリと呟いた言葉に隣の彼女はむにゃむにゃと寝言を返した
「……………何言ってるか解らないよ」
彼女はその後もスヤスヤと眠り続け男はそんな無防備な姿を愛しそうに眺めていた