第104章 振り回し回され
「他は何処が見たいの?」
「……………沙夜子、聞いてる?」
あまりにもドキドキし過ぎてしまいぼーっと彼を見上げていた私は彼の言葉に返事をする事無く固まっていたのだが彼が目線を合わせる様に屈み至近距離で顔を覗き込んで来たので鼻血を吹き出しそうになってしまった
「あ、はい!えっと………洋服を、イルミさんに選んで貰いたいなぁって」
そして私の口から出たお願いは考えてはいたが幾ら何でも面倒だろうと口に出さないでいようと思っていたお願いだった
しかし彼は、ふーん。と唸ると歩き出して行く
「何してるの。行くよ」
「……はい!」
面倒臭そうな素振りも見せない彼の歩みに弾む胸
口に出して良かった。心底思った
彼は暫く歩いた先にあったブティックへ躊躇無く入ると
店内を歩き回りくまなく商品を見て回っている
私はその様子をただ眺めていたのだが彼は一着のワンピースを手に取ると真っ直ぐ私の元にやって来て私に宛がい小さく唸る
私はされるがままでじっとしていたのだが彼は其れを元の位置に戻すと暫くしてまた違うワンピースを私に宛がった
「うん。これかな。試着してみて」
「………あ、はい!」
彼が随分丁寧に時間を掛けて選んでくれた事が嬉しくて緩む表情をそのままに試着室に入る