第104章 振り回し回され
まさか彼が私の言葉を真摯に受け止め真剣にマグカップを選んでくれていたとは思いもしなかったのだ
「冗談なら要らないね」
「冗談って言うのは冗談で!いります!めっちゃいります!それにしましょう!」
無表情に棚へ戻そうとした彼を必死に止める
しっかりと見た訳では無いが彼が選んだ、という事実が重要でありデザインは二の次で良いと思った
其れ程感激していた
私は嬉々として彼からマグカップを取り上げると小皿等の入ったかごへ入れてレジへ運んだ
そしてお会計しようと財布を取り出していると彼は私よりスムーズに会計を済ましてしまい、レジカウンター上の袋を持ってさっさと店から出て行ってしまった
財布を開いたままポカンとしていた私も慌てて彼を追う
「イルミさん!悪いです!払います!」
「要らない」
「でも私の買い物やし!」
「要らない」
「でも「………はぁ………沙夜子、ここはありがとうだけで良いんだよ。せっかくご褒美で来てるんだから物の一つくらいおねだり出来ないの?」
「すみません……」
「じゃないでしょ」
「ありがとうございます……?」
「よくできました」
彼があまりにも満足気に笑みを浮かべるので騒いで仕方がない心臓に発作を起こすのでは無いかと思った