第104章 振り回し回され
彼は私のお願い通りショッピングに付き合ってくれている
数回彼とショッピングに出た事はあるが今まで彼は自身の興味のある物は見るというスタンスで興味が無ければ店の外で待っているという感じだったのだが今日は会話を交わしながら一緒に店内を見て回ってくれる
その変化は一見小さな事の様でいて随分違う
食器ひとつ見るにしても楽しくて仕方がない
「新しいマグカップ欲しいんですよねー……」
私の呟きに彼は店内を振り返る
「マグカップあっちにあるよ」
「二人でお揃いにしたいんです」
浮かれ過ぎていて思わず漏れた台詞に彼は私をじっと見遣った
………しまった………。彼に引かれてしまっただろうか……彼女面してんじゃねぇ!と思われてしまうだろうか………なんて考えながらそそくさとマグカップが並ぶ棚へ脚を運ぶが彼も当然私の後を着いて来る
………非常に気まずい………
彼は私の言葉に対して何も返事を寄越さないので更に気まずい
マグカップの棚を眺めるが込み上げる気まずさで全て同じに見えてくる
早急にこの空気を打破すべく私は乾いた笑いを溢した
「あはは……お揃いとか痛いですよね。調子乗っちゃいました!冗談です!」
「………え、冗談だったの?」
「え」
「これなんてどうかなと思ったんだけど」
同じくマグカップの棚を見ていた彼の手には色違いのマグカップがしっかりと握られていて私は何故か恥ずかしくなった