第103章 素敵なご褒美を
そんなに大きな口を開いている様には見えないが一口で大幅に減るパン
無表情な顔に大きな頬袋が膨らみ途端に動物的な可愛さが溢れる
そして私はその様子をバシバシ激写しているのだが
何の疑問もぶつけずに黙々と食事を続ける彼はまだ寝起き故に頭が回っていないか、もしくは私の奇行に慣れたかだ
彼が視線を落とした先は私が並べたアクセサリーで
「なんでこれが出てるの?」
「あ、勝手にすみません……付けて貰おうと思って」
「なんで?」
「ご褒美の件なんですけど今日1日何でも言う事聞いてくれるんですよね……?」
「………うん」
「で!世界にひとつだけのイルミさん写真集を作ろうと思いまして、イルミさんには今日1日モデルさんをして貰いたいんです」
彼は悠長な所作で2つ目のパンを手に取ると僅かに眉を潜めた
「………また馬鹿げた事を思い付いたね。沙夜子は一回病院で脳を診て貰うべきだよ。脳味噌にカビが生えてるかもしれない」
「…………なんとでも言うてください!私は何言われたってイルミさん写真集を作りますからね!!」
酷い言われようだが挫けない
なんてったって彼は今日1日私に絶対服従なのだ
(………絶対服従………だとッ?!?!)
「きゃー!そんなんっ……たまらんなぁ……!!!」
「沙夜子は何の病気なんだろうね。末期だと思うよ」
一人その場に踞って身悶える私に彼の言葉は全く刺さらなかった
彼は身支度を整えるべく洗面所に立つ
私はそれを追って髪を結い上げる姿や歯磨きをする姿を次々に写真におさめて行く