第102章 彼と私の防犯講座
「本当に強姦犯ならこんなに悠長に待ってくれないよ?早く」
「………っ」
羞恥の頂点に到達した私は思い切り頭突きをして彼の股関を蹴り上げて立ち上がると横腹に蹴りを食らわせ部屋の隅へダッシュした
教えられた通り完璧にやり切った
かなり痛む頭を擦りながらはっとする
……………急所を思い切り蹴ってしまった…………
未だうずくまり立ち上がらない彼の姿にみるみる青ざめる
「………あの………イルミさん………大丈夫ですか………?」
私は即座に駆け寄り彼の背中を擦った
「……………うん、合格」
くぐもった声の後彼はむくりと上体を上げた
「………大丈夫ですか……?」
「平気は平気だけどなかなか効いた。」
「………すみません」
「一般人なら数分息出来ないかもね。男相手だと結局これが一番手っ取り早いし萎えさせるには効率良い。」
「…………はぁ」
彼は涼しい顔でそう言うとスカーフを手渡してくれた
「で、明日どうする?」
「…………あ、忘れてた……」
自身が仕出かした事だが驚きと戸惑いの余りご褒美の件がすっかり頭から抜けていた私は間抜けな声を上げてしまった
ぼんやり考えていた事は彼も急所への攻撃は効くという事実に人間味を感じ妙にしみじみしていたが今はどうでも良くご褒美について考える
「………とりあえず外出ですね!」
「了解。お願いはまたその都度言って」
「あ、はい解りました。」
彼はゆるく頭をかきながら座椅子に座るとテレビを付けた
こうして彼の防犯講座は幕を閉じ、私は新しいスキルを身に付けた
そして明日彼と何をしようか考えるだけで楽しく彼の隣に腰をおろして嬉々として行き先検索を開始したのだった