第102章 彼と私の防犯講座
途端に揺れる肩
その理由は彼の大きな手がしっかりと太ももに触れたからだった
勿論衣服越しではあるが本当に触れられるとは思わずに俯いていると
「ほら、どうしたの?触られちゃうよ」
なんて際どい台詞が背後から降ってきてサラサラと頬を撫でる黒髪から彼の香りが鼻を掠めた
あの夜の出来事がフラッシュバックしてクラクラする私に
「もしかして忘れた?」
先程から言葉を寄越す彼の声色には全くの色を含まず邪な気持ちを抱いているのは私だけの様で憎たらしい
太ももに添えられていた手も何の意思も無く厭らしさを全く感じさせない
するりと内太ももへと移動した彼の手
私は彼の指を掴み捻った
「なんだ、覚えてるんじゃん。うん。良い感じだよ」
なんて言いながらいとも容易く離れた彼を思い切り睨み付けるが彼は尚も涼しい顔で続ける
「じゃあ次ね」
手を捕まれた場合、肩を捕まれた場合等様々な場面の技を試して行き残す所際どい物だけとなった
「最後ね。俺が強姦犯をやるから頑張ってね」
「…………えっと」
何だかんだ防犯講座に必死に食らい付いていた私だが(途中からは彼へ込み上げる怒りを原動力にしていたが)流石に押し倒されたりするのは戸惑いがあり苦笑いを浮かべる
私の表情で流石の彼も何かを察したらしく「うーん」と唸った