第102章 彼と私の防犯講座
手早く用意した玉子焼きとウインナーとミートボールというお弁当の定番の様なメニューをちゃぶ台に並べる
小学生の遠足の様なラインナップだが彼の大好物に間違い無く彼は瞳をキラリと輝かせた
可愛らしい無表情の横顔に頬が緩んでしまう
「いただきます」
「いただきます!」
しかし直ぐに視線を戻したのはテレビ画面で次いで始まった不審者対策を真剣に見ている
内容的に女性向けの様な気もするが何がそこまで彼を惹き付けているのか……もしかしたら体術なんかを学ぶ目線なのかもしれないなぁなんて考えている内に夕食も番組も終了した
洗い物をしていると彼はふらりとキッチンへやって来て食後のコーヒーを入れながら
「それが済んだら話がある」
唐突にそう言った
「え、あ、はい」
辛うじて返答はしたものの呆気に取られてコップを取り零しそうになった
…………話…………?
改まって話したい事とは一体何だろう。家で二人きりなのだから普段通り何の気兼ねも無く会話出来る環境の筈だ
それが急に改まって何を話そうというのだろうか
もしかしてあの日の真意に迫る内容なのだろうか………
自ずと鼓動が早まり妙な緊張が走る
洗い物を済ませた私は食後のデザートにとタルトをちゃぶ台に乗せた後に強張る身体で彼の隣に腰を下ろした
彼はゆっくりとした所作でテレビを消し、部屋には静寂が訪れる
身体を此方に向けた彼につられて正座した私も膝を彼に向ける
緊迫した雰囲気の中彼は深く息を吐くと真っ直ぐに私を見据え
「今から特別防犯講座を執り行う」
真剣な眼差しで言葉を吐いた