第102章 彼と私の防犯講座
9月21日
其々仕事をこなし、私達はすっかり日常を取り戻していた
彼は至って普通だし私も普通に生活している
以前と違う事は毎日薄手のスカーフを首に巻いて傷痕を隠している事くらいだ
藤木に仮面ライダー!とからかわれたが面白くも無いのでスルーしている
お土産を頼まれていたので無難な紅芋タルトを手渡しておいた
彼にプレゼントされた黒猫は毎晩抱き抱えて眠っており名前をイルにゃんと名付けた
彼はそんな私に冷ややかな視線を送るがあの晩を共に乗り越えたイルにゃんと私の絆は深い
帰宅途中ガラスケースに陳列された美味しそうなイチゴタルトを見付けて二つ購入して帰る
帰宅すると珍しく仕事を終えていた彼は既に入浴を済ませた様で濡れた髪をタオルで拭いながら座椅子に座りテレビを見ていた
「お帰り。お疲れ様」
「お疲れ様です!ただいま!」
彼が髪を拭う度に着ているTシャツが持ち上がりチラリと覗く素肌と下着にドキドキしつつもタルトの小さな箱をちゃぶ台に置く
彼は其れに一瞬視線を向けたが直ぐに画面へ視線が戻った
真剣な眼差しで見ているのはどうやら犯罪に鉢合わせた際にどう対処すべきかを紹介している番組で画面右上には小さな文字で痴漢撃退と書いており彼には全く関係無い様に思う
「夕飯すぐ用意しますね!」
「………んー」
ぼんやりした返事
彼はそれだけテレビに夢中らしい
結構テレビっ子だと思う