第101章 何でもない日常へ
立派な角を揺らして歩く水牛はお利口で其れを操縦する係員の人のガイドは実にユーモラスながら生態やその子の性格迄詳しく教えてくれて園内をゆっくりと進む水牛車に揺られるのは楽しかった
私達は園内をくまなく散策して沢山の写真を撮り随分私も平常心を取り戻した
レンタカーの返却時間が迫っている為に亜熱帯の森を後にする
レンタカーを返却してしまえば後はマイクロバスで空港へ送られるだけで楽しかった旅行は味気無く終わる
空港のレストランで昼食を取りながら三人で楽しかった旅行を振り返る
「クロロさんは何処が一番楽しかったですか?」
「やはり万座毛だな。自然が育んだ壮大な光景、深く悲しみを孕んだ場所ながら堂々と佇む様は恐ろしい程美しい………」
「……成る程です」
いきなり団長モードのスイッチが入った様に喋り始めたクロロさんに戸惑ってしまった
「………イルミさんは何処が一番楽しかったですか?」
「海」
「海ですか!楽しかったですね!」
「うん。沢山魚も取れたし」
「ん?」
海で魚等取っただろうかと思い返し磯遊びをした事を思い出すが私が知らない所で魚を取っていてもおかしく無い……
「イルミさんも魚取ってたんですね!」
「………?…何言ってるの沙夜子が沢山取ったでしょ」
「あ、岩場ですか!楽しかったですね!イルミさんも楽しかったんですね!」
「うん」
私ばかりが楽しんでいて彼はただぼんやり座っていた印象しか無かったのだが彼がこの旅行で一番楽しかったと感じている事が意外だった