第101章 何でもない日常へ
その後クロロさんの独創的な(適当とも言う)演奏を聴いた後に観覧船に乗り込んだ
彼は然り気無く私を船の外側の席にしてくれて人工的に造られた湖水を進む船の波を眺める
約30分のクルーズ船は船頭さんの楽しいガイドと共に湖水を巡る
亜熱帯の植物や小動物について解りやすい解説に私は終始感心していた
水辺に咲いた美しい花が目に入る
「イルミさん!あの花綺麗です何の花でしょ?」
彼は私の言葉に どれ? と言いながら指差す方向を覗き見る
普通に座っているよりぐっと近付く距離でシャランとネックレスの音が聞こえて心臓は鼓動を早めた
「あれはらんの花って言ってたよ」
「蘭ですか!ピンク色もあるんですね!白しか知りませんでした」
「白はあっちに咲いてた」
姿勢を正して言う彼は意外にしっかりガイドを聞いていてなんだか可愛く思ったりした
後ろの席に座ったクロロさんも真剣にガイドを聞いていて彼等のギャップから来る可愛らしさは目を見張る物があるなぁなんて一人頷いた
次いでやって来た芝生の広場には木製のアスレチックがあった
まだ空いている時間帯だからか遊ぶ子供は少なく私も遊びたいなぁと思ったがセミがとまっているのを見て辞めた。危なかった。
と、私の後ろを歩いていた彼に肩を叩かれ振り返る
「沙夜子、ヤギ」
彼はそう言うと広場の端を指差した
其処にはリードに繋がれた小さなヤギがいて思わず歓声を上げる