第101章 何でもない日常へ
私はただぼーっと彼の消えた扉を眺めていたが破れたTシャツやブラジャーが視界に入り漸く思考が動き始める
へたり込んでいる身体に降り注ぐシャワーでも消せない彼の肌の温もりや熱の籠った視線を思い出し一人肩を抱き寄せる
彼も私と同じ気持ちだと確かに思った
なのに何故………彼は途中で出て行ってしまったのだろうか
視界に映るいとも容易く破られたTシャツは昼間お手製網に使われたもので
あんなに楽しかったのに……なんて考えると無性に涙が流れた
……………当たり前か………
私は彼との約束を破ったのだ
最初は以前の様にテリトリー内のものに手を出された事に苛立っているのだと思った
しかし、本当にそれだけの理由であんなにも熱っぽい視線を向けるだろうか………彼に付けられた傷痕を指先でなぞってみるとジリジリと痛かった
……………只の独占欲だったのか……
ぼーっとしながらも湯船に湯を張る
(…………あ、パンツ脱ごう…………)
彼がショーツに手を付ける事は無く自ら取り払いまだまだ溜まりそうにない湯船に三角座りする
(……………ブラジャー………千切られたなぁ…………高かったのに……)
無残に転がった下着は旅行に向けて購入したブランドの物だった
下着が渋い私の一張羅に成る筈だった其れは真新しいまま1日にしてショーツだけに成ってしまった
…………いや、そんな事はどうでも良いのだが