第100章 濡れた素肌
私は胸元に顔を埋める彼に抱き付いた
自らの意思で彼の肌に触れて胸は切なく高鳴る
見上げた彼の視線と視線を交えると彼の瞳は動揺に揺れている様に見えた
彼となら後悔はしない、そう思った矢先彼は胸元から離れる様に私の手をやんわり取ると手のひらにひとつ口付けを落とした
「…………イルミさん……?」
再び壁際に押し付けられる様にきつく抱き締められ濡れた素肌と素肌が重なった
シャランと鳴るネックレスの音と彼の香りで熱くなる身体とは裏腹に不安に駆られる心
距離を取った彼は屈むと私の濡れた髪へもうひとつ口付けを落とした
「温まってから出るんだよ。しっかり髪も乾かさないと風邪引くからね」
普段より柔らかな声色でそう言うと背中を向けてバスルームから私を置いてきぼりにして出て行ってしまった
1人残された私はシャワーの音を聞きながらただ壁をずり落ちる様にへたり込んだ
「…………イルミさん………?」
誰にも届かず落ちた言葉はシャワーと共に流れて行った