第100章 濡れた素肌
顔が見たかった
そっと近付き柔らかな頬に手を添える
やっと交わった瞳は涙に濡れて外の光を反射し、キラキラと輝いた
余りにも儚く弱々しい彼女を綺麗だ、と思った
そんな彼女を包む他の男の香りは風に吹かれて鼻を霞めた
沸き上がる怒りに室内の男を見遣る
「……ヒソカは何処?」
「イルミ解ってるだろ!今優先すべきは彼女じゃないのか?!」
「……殺す……」
「イルミ!!おい!!…………はぁ…………屋上だ………」
許せなかった
彼女の涙が許せなかった彼女に自身以外が触れる事が許せなかった彼女から薫る自身以外の香りが許せなかった
沙夜子の流す涙すら俺だけの物であって欲しかった
___________"
クロロさんに抱かれたまま呆然としていると目の前には愛しい彼がいた
割れ物を扱う様にそっと頬に触れた彼と視線が交わり
初めて彼の元へ帰れたのだと理解した
動揺した様に揺れる真っ暗な瞳を見て再び涙が溢れる
色々な感情がぐちゃぐちゃに成って言葉は出ずただ彼の名を呼んだ
バルコニーから消えた彼の背中
クロロさんもいつの間にか姿が見えなくてただ何も出来ず崩れる
………彼が怪我をする………最悪死ぬかもしれない………
気が付く頃には嗚咽を漏らし泣いていた
戦闘狂のヒソカさんは私を餌にしたのだ
私の軽率な行動で彼に何かあれば私はどうすれば良いのだろう