第99章 祭り囃子の最中
その際丁度鉢合わせた沙夜子はしっかり衣装を着こなしており普段の雰囲気より随分艶やかだった
ここは男の嗜みとばかりに褒め言葉を紡ごうとしたその時
彼女は言葉を遮る様に不調を訴え走り去ってしまった
感じたのは違和感だった
……………まぁ、沙夜子は俺達と違い只の一般人。体調を損なう事もあるだろう……と思った
彼女から伝言を頼まれたが生憎イルミはたった今すれ違いで着付け室へ入ったので此所ですっ立っていたって暇を持て余す
新館に宿泊していた為に旧館へ来たのは初めてだが旧館と言っても随分と立派で見て回っていれば其れなりに時間は潰せるだろうと考え歩き始めた
幾つか点在する売店を見て回った後にプールサイドを訪れる
祭りと吟うだけあり特別に出店された露店は種類も豊富で気が付くと随分時間が経っている様に思う
ヤバい………イルミ忘れてた……
もう一度着付け室の前へ戻るとイルミは只直立で待っていた
「あ、クロロ。沙夜子まだ出て無いよね。」
「いや、其れが体調悪いとかで先に部屋で休むってよ。」
「そうなの?じゃあ俺も戻る」
「……あぁ。」
「クロロは独りで楽しんでね」
「……………あぁ。」
単調ながら刺のある言い方に若干落ち込みながらも俺はイルミと別れた後、再び祭り会場を見て回った
食べ物屋が中心に成っていて腹は空いていないが見慣れない物が多く結構無理をして食べてしまった
ふと貼り出された予定表に目を遣る21時からエイサーダンスショーがあるらしい
……せっかくなので見よう………
時計を見遣ると只待つには少し時間が長く部屋で待つには短い微妙な時間だった