第99章 祭り囃子の最中
窮屈な衣装に慣れない足元は私の気持ちを焦らせる
幾ら急ごうとも上手く動けず何度も転びそうになりながら新館迄やって来た
「………屋上……」
沢山の人が待つエレベーターは随分悠長に見えて隣の階段を駆け上がった
あのかんざしは私の宝物
彼が私にプレゼントしてくれた形有る物
この先彼が居なく成った後も続く人生の支えになる物できっと夢の様な今を、彼との日々を色褪せず確める為の手段なのだ
じんわり滲む涙を耐える
絶対に取り返す……
私は息も絶え絶えで5階迄駆け上がりエレベーターのボタンを押した
ざわめく心を抱えながらも冷静に考えて高層ビルを階段で行く方が時間が掛かるし体力が持たないと思った
沢山の人が乗り合うエレベーター内でただ息を切らせた私は浮いていたが一向に構わない
壊されていないだろうか……目的は何なのか………何も解らずただ気持ちだけが急く中、次々人が降りて行き遂に私は一人最上階にたどり着いた
「………屋上やんな」
辺りを見渡し非常口の標識が吊るされた扉を開けば上へ続く階段
階段を駆け上がった先にはどう考えても厳重に錠がされていそうな鉄の扉が静かに佇んでいた
震える手でドアノブを握り思い切り開くと広がる暗闇と吹き込む風に其所が野外である事が解った
私は静かに暗闇に足を踏み入れる
見渡しても呼び出した張本人の姿は見えない
私は不安から震えた声を張り上げた
「………あの………!!ヒソカさん………!!」
「………クックックッ……待ってたよ♥️」
「……っ!!!」
背後から聞こえた声に振り向けば彼は直ぐ傍に立っていて思わず飛び上がりそうになったが怯んでいる暇は無い