第99章 祭り囃子の最中
彼はソファーに座ってニュースを見ていて私はBGM代わりに其れを聞いていた
「……イルミさん、首里城綺麗でしたね!」
「うん」
「洞窟凄かったですね!」
「うん」
なんて会話を数回続けていると突然部屋に静寂が訪れた
彼がテレビを消したのだと気付く
其れと同時にベッドに感じる軋み
携帯画面から視線を外すと私の隣に彼が腰を下ろしていて振り返る様に横目に私の姿を捉えていた
「さっきの写真だけど」
「ハイビスカス……?」
「うん。……あれあの二人には送らないでね」
「……はい」
「……俺にも見せて」
彼は言うなり同じ様にベッドに横たわりスプリングがギシリと鳴った
彼はシーツに広がる髪をそのままに画面を覗き込むのだがその距離の近さに鼓動は早まる
静かな部屋で二人きりベッドに横たわっている為なのか手を伸ばせば簡単に触れられる距離からか、そのどちらもが胸を騒がせた
いい加減慣れないものかとも思うが日々募る想いはその余裕も与えずにえらく早い脈動を続ける
私はそんな状況の中、表情に気持ちが出ていないだろうかという事ばかり気にしながらもスマホ画面をスライドさせて沢山の写真を彼に見せた
彼は過去に成った景色を眺めながら
「空が綺麗だとか海が綺麗だとか……ましてや建物が綺麗なんて今まで生きてきて思った事も無かったよ」
ポツリと呟いた